誕生日に寄せて
少し前に、彼女の弟がてんかんで倒れた。
遅めの朝ごはんを二人で食べている最中に、彼女の母から電話口で伝えられ、食べ終わった後に彼女はそのまま病院へ向かった。私は、iPhoneの充電器を忘れていないか確認して彼女を見送った後、コーヒーを淹れ、てんかんについて調べた。
幸いなことに、命に係わる病気ではないし、対策を怠らなければ十分に付き合っていけるものだ。ただ、やはり発作が起きたときに一人でいるのを考えると、怖い。新たなスタートを切ったばかりの弟くんの一人暮らしを、どう見守っていくか。
そして、彼女と、彼女の家族が模索している横で、私は何ができるのだろう。
私の場合、自分の生活がうまくいっているとき、恋人は必要ではない。ただ、精神が荒れているときは、全くと言っていいほど人が寄り付いてこない。それもそうだろう、一度や二度、愚痴や悲しみの酒に付き合うことはしても、それ以上はやめてくれと思うのが人の心だ。けれど、どうしたって、そうならざるを得ない時があるのもまた人生だと思う。
彼女もよく言っている。「今はお互い、比較的うまくいっているけれど、将来、どうなるか分からない」と。まあ、たいていそういう話の結論は「二人で話し合いながら乗り越えようね」ということなのだが。
諸事情があり、臨時ニートになっているにも関わらず、若者の居場所つくりに奔走している知人に頼まれたからという理由で、自身もまたその手伝いをしてしまう彼女を、私は支えたい。
学級崩壊に陥った小学校の児童たちを相手とする場で、逆に小学生たちに相手にされずとも、それでも、「この子たちの声に耳を傾ける大人がいない」と嘆く彼女の話を聞きたい。
もし彼女が、将来、誰かの助けが一生必要な身体になったとしたら、私がその誰かになりたい。
実際には、寝床を提供してもらって風邪のときに看病されているのは私だし、「集団アイデンティティと責任」について延々と語りあっている最中に「めんどくさい」と言って先にギブアップしたのも私である。
「言ってることとやってることが裏腹」状態であるうえ、お互いに一生好きでい続けるかなんてことは誰にも分らないが、だからといって、現時点での、彼女の横にずっといたいという自分の気持ちを否定できるわけでもない。ならば、将来も一緒にいるほうに賭けてしまえばよい。どうせ確率は半々だ。
じゃなきゃ、恋愛なんてできないでしょう?いや、恋愛に限らず、「何かを選び」「何かを選ばない」という決断がその時点で正しいかどうかなんて、誰にもわからない。もっと言えば、後から振り返ったところで、「正しさ」の判断は解釈でしかない。
そもそも、確率は半々なのだろうか。少し数字で遊んでみよう。ただの遊びなので、つっこみは勘弁願いたい。
世界の人口は70億人。私の場合、女性に惹かれやすい傾向はあるが、性別は絶対条件ではないので、そこでのフィルタリングは無し。
英語、日本語、韓国語のうち、どれかで意思疎通が取れる人は、世界に7億1400万人なので(以下URL参照)、世界人口の1割とすると、
70億/10 = 7億(人)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/015/siryo/attach/1379917.htm
めちゃくちゃ単純に、世界の平均寿命を70歳として各年代の人口が等しいとすると、恋愛対象になるであろう20代、30代は
7億/3.5 = 2億(人)
https://memorva.jp/ranking/unfpa/who_whs_life_expectancy.php
私は、最低限のアカデミックなトピックについて共通認識がある人と一緒にいたいので(余談だが、けれど院生とは付き合いたくない)、またもやめちゃくちゃ単純に、大学進学者に絞ると、
2億*0.38 = 7600万(人)
https://www.globalnote.jp/post-1465.html
また、その中でも「他の人より学業に一生懸命励んでいる」人が半数として
7600万/2 = 3800万(人)
私も彼女も、この、画像や動画メインのSNSが主流の時代に、ブログを細々と更新しているのだが、それは二人とも自分の考えをなんらかの形で発散させたいからだと思う。そして、私は、自分の意見をもっていて、それを上手く伝えられる人が好きだ。(私と彼女の共同生活がうまくいっている主な理由は、二人とも似たコミュニケーションの取り方をするからだと分析している。つまり、基本的には何でも言うスタイル。)
世界のデータは入手できなかったが、日本でブログを更新している人は約1割らしい。
3800万/10 = 380万(人)
https://news.mynavi.jp/article/20130624-a021/
私も彼女も、ボランティア参加経験があり、社会に対する考え方や行動力の一つの指標になると思うので、考慮に入れると
380万*0.2 = 760,000(人)
http://honkawa2.sakura.ne.jp/3002.html
非常にざっくりした感想だが、中身が最高に合えば、世の1/3の人の外見は気にならないので、
760,000/3 = 253,000(人)
つまり、最低限の条件を満たしているのは、世界で253,000人である。世界人口が70億人なので、
253,000/70億 = 3.614285714285714e-5
(e-6は、10の-5乗という意味)
ふむ。ものすごく簡単に言えば、彼女みたいな人に出会える確率はかなり低い。そして、同じことは、彼女にとっての私にも言えるだろう。
この計算ほど「机上の空論」というか、無茶苦茶なものもないが、少なくとも「人間、半々の確率で別れるか付き合い続けるんだから、付き合い続けることにしよう」と考えるよりは、妙に安心感を与えてくれる計算である。
いや、やっぱり、そんなことはどうでもいい。不正に怒り、他人のために涙を流し、様々な人の話に耳を傾け、書を読みながら、自分にできることは何なのか模索し続ける彼女が好きだ。二人で、喜びは二倍に、苦しみは半分にしながら、人生を共に歩みたい。
そんな風に思える人に出会えたことが、私の人生で一番の幸運である。生まれてきてくれてありがとう。誕生日おめでとう!